シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

その攻撃を頬すれすれに躱(かわ)し、そして神崎家に向かう武器を糸で搦め捕り引き寄せる。


元々私は糸以外の…例えば刀剣の扱いは得意ではないけれど、最近緋狭様指導元、あらゆる武具を筋力増強の一環として扱うことが多くなったから、匕首の扱いも初めてではない。


カチンという、刃が交差する金属音が響く。


研ぎ澄まされた鋭利な刃は、少年の手の元でくるくると回転しながら私に向かい、そして私は匕首の柄の部分の環でその刃先を捉えて、力尽くでその威力を抑圧する。


かなりの使い手。

そしてかなりの"闘鬼"の顔をした、真紅色の少年。


まだまた余力があると見られ、私の中の本気のスイッチを入れようとする。


こんな小手調べではなく。

こんな相手の実力を推し量るものではなく。


――桜、お前は力に走りすぎだ。


力だけを望む、本当の姿に。


――力のみを渇望するな。衝動的になる己を抑えよ。



そんな時だ。


目の前の少年の顔が突如…

温和なものに変わったのは。


それはまるで少年が少女になったかのように。

楚々たる色を浮かべて。


「ふふふ、そういうの…」


それは一瞬のこと。


事態の変化についていけなかったその一瞬。


「油断大敵って言うんだよね?」


少年は笑いながら、懐から何かを取り出した。


それが直径20xm程度の、銀色に輝く鉄製の環(リング)で、

鉄環手(てつかんしゅ)と呼ばれる重い暗殺武器だと解するのに、時間がかかってしまった。


気付けばそれは、神崎家に向けて投げられた直後で。


裂岩糸を放つのが僅か出遅れてしまい、


ガシャアアアン!!!


窓が割れてしまった。

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