シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
舌打ちした私は、糸で少年を縛り上げようと試みた。
だが少年は、匕首を器用に回転させ、柔軟な関節を持つ体躯にて、私の糸の攻撃を外してしまう。
そして片手では、再び取り出した鉄環手を自在に操りながら、予測不可能な横の動きを加えてきて。
私も身を捩りながらその攻撃を躱しつつ、次第に本気にさせられる。
心の何処かで、闘いを喜ぶ自分が居て。
そんな時、
「桜!!?」
家の中から飛び出てきたのは、馬鹿蜜柑で。
少年は鉄環手を煌に投げつけた。
「!!!」
煌は、素早くピアスから顕現させた偃月刀の力で、銀の環を真上から叩き落とし、
「その瞳…制裁者(アリス)!!?」
驚いた声を放つ。
「お久しぶり、BR002」
少年は戦意を消して、煌に向けてにっこりと笑いかける。
その目は未だ赤いままだが、その姿はおっとりとした幼い少年姿。
そして――
その顔を突如、がらりと険阻に変える。
「裏切り者」
幼い姿からは想像出来ない、冷たい声音を響かせて。
褐色の瞳は、苛立ったように細められて。
「1人、ぬくぬくと…幸せになんかさせないよ?」
少年が、真紅色の瞳で笑った。