シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「悪いけどよー」



煌が面倒臭そうに顔を顰めさせて、橙色の頭をがしがし掻いた。



「俺、生きる場所は此処なんだわ。

折角の勧誘だけど、他あたってくれね?」


その目に浮かぶのは、完全なる拒絶。


だから――

私は安心した。


例え馬鹿でも。

例え腐っていても。


手がかかるし、情けないし、毎度怒鳴りつけたくなる…発情してばかりの本当にどうしようもない犬だけど。


だけど。


この男は何が大事なのか、

いつも本能的に見抜くから。


どんな煌でも、煌は煌だ。


私が危惧することなく。



「イヤだと言ったら?」


少年が、やけに大人びたいやらしい笑いを顔に浮かべた。


「仕方ねえよな。元…同士討ちっていうのはしたくねえけど」


細めた…褐色瞳に浮かぶのは。

修羅場を潜ってきた者特有の…剣呑な光。


そして煌は偃月刀を握り直す。



「はははははは」


少年は同時に笑いだして。



「生きる為に寄生するのは僕達も同じ。

"そこ"で生きるというのなら、せいぜい闘いに勝ってみせてよ。

13日間…無事に生きてられるといいねえ。


強いからねえ、めちゃくちゃ。


"あいつ"」



それは…



「ああ!!?」


誰のことを指しているのか。



「僕が来たのはただの"警告"。

またね、BR002。

今度は…昔話しようよ。

前みたく」


そして私達に、子供らしい所作で手を振って。


「また近いうちに会うことになると思うよ?

僕は君の勧誘、諦めていないから。

じゃあ、またね」


にっこりと笑って、空高く跳ね上がると…視界から消えた。



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