シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「玲くん1人で?」
それは意外に思うほど、鋭さを秘めていて。
「……。僕1人で会いに行くのは嫌?」
頭に過ぎった1つの可能性。
縋るように質問すると、芹霞がきっぱり答えた。
「嫌。あたしも一緒に行きたい」
明らかに、拗ねた表情をする芹霞。
僕の心は、溜まらず躍った。
もしかして、妬いてくれてるの?
ねえ、少しは期待していていいの?
櫂と煌の視線が突き刺さる。
痛いくらいの強さがあるのに、それが強いからこそ気持ちよく。
僕は被虐的なのかと錯覚する程に。
「だって…。
あたしの生徒手帳を届けてくれるのに、玲くんだけ行かせるのは、人としてよろしくない」
そういう…ことか。
顔に浮かぶ笑いが、虚しいものへと切り替わる。
極度の期待は禁物だと、長年の"傍観"により判っていたはずなのに。
「ねえ櫂…あたしも行っていいよね? 玲くんも一緒だし」
どうして――
櫂に了承を取るんだろう、芹霞は。
「仮に蝶々来ても、玲くんなら見えるし」
その言葉に、誰もが不愉快そうに表情を曇らせて。
"玲くんなら"
何て気持ちいい響きなんだろうか。
「でね、その後…」
「"シマちゃん"か?」
漆黒の瞳が、芹霞の目に絡みついた。
やっぱり…オチがあったか。
だけど、そんな結果でも…僕と一緒に居ることを選んでくれた気がして、大して悪い気分にはならなかった。
大概…僕も単純な男みたいだ。