シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「櫂。お前…マンションに火をつけたのは…そいつだと思っているのか?」


思わず僕が声を上げる。


「1つの可能性だ。そして煌、後姿でも…お前だけが目撃している」


「OK。じっくり見てやるよ」


「あの…」


桜が口を開いた。


「実は、先程私が調査に行こうとしていた場所…豊洲の上岐物産なんです。玲様がお会いするのは、そのご令嬢でしょうか」


くりくりと、大きな目が動く。



「院長が慌てるくらいなら、恐らく同一だ。

上岐物産なんて1つしかないしな。

さて、色々動き出すか。

はたして偶然か、必然か」



櫂は不敵に笑った。



櫂。


お前がシマちゃんをこの家を呼ぶ目的はもう1つあるんだろう?



僕と芹霞を、早く家に帰らせるために。


2人きりの時間を短くするための…牽制。


僕の子供っぽい牽制は、お前と芹霞との間では役に立たなかった。



車のドアを開けた時。


惹かれあっている――


そうとしか思えなかった程、至近距離にいた2人。


それを目にした僕は――

凍り付いてしまった。


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