シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
やはり、駄目だ。
煌とでさえ嫌で仕方がないのに、芹霞と櫂の組み合わせは、本当に心底こたえるんだ。
もう1秒遅ければ、触れ合っていただろう唇。
芹霞は――
拒んでいなかった。
むしろ吸い寄せられていて。
まるでそれは1枚の絵の様に
周りを弾いていたんだ。
完全に、2人だけの世界。
ああ――!!!
思い出すだけで、心臓がぎりぎりと痛む。
発作が起きそうなくらい、苦しくて。
もし、1秒後の現場を見ていたならば。
肌という肌を掻き毟って、発狂していたかもしれない。
櫂に…
僕が敬愛する、可愛い従弟に…
殺意を持って飛びかかっていたかも知れない。
まるで――…
僕の嫌いな母の如く。
罵り、呪い、場を血で穢して。
怖いのは――
櫂のものになった瞬間?
気狂う自分?
そして僕は2人に見放されて…延々と、出口のない痛苦の円環の道を歩くのだろうか。
何処までも1人…冷たく淀んだ道を…。