シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
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榊さんの言う通り、あたしは109とは無縁な女だ。


だけど雑誌で、ティアラ姫の唯一の販売場所だと知り…櫂と煌とで出かけたのが1週間程前になる。


やはり彼らにも姫のグッズは不人気で。


折角全員お揃いのストラップ…携帯を持たない煌にはキーホルダータイプのものを、お小遣いはたいて買ってきたのに、何とも微妙な反応。


特に財閥の御曹司たる櫂は…上流階級との会合によく出るから、そんな怪しいキーホルダーなどつけられないと、煌に馬鹿にされたけれど。


――ありがとう、芹霞。これで君とお揃いだね?


しゅんとしていた最中、早速笑顔でつけてくれたのは優しい玲くんで。


玲くん大好きと抱きついた途端、怖い顔をした櫂が自分の携帯につけた。


すると桜ちゃんもつけてくれて、


――判ったよ、俺も持つ!!!


――お似合いワンコ…。結婚したら?


桜ちゃんの呟きに煌は怒っていたけれど。


あたしの女友達は、こうした強い結束に無関心で、未だ携帯につけてくれない。


だから、新たな他学校の友達である紫茉ちゃんが、大いなる関心を寄せてくれたことに、あたしは凄く嬉しくて、まだ東京見物もロクにしたことがないという彼女を、まずティアラ姫ショッピングから誘った。


「随分と…大人しくなりましたね、此処。別に閑古鳥…というわけでもなさそうですが…何というかカラーが変わったというか、地味になりましたね」


エスカレーターで7階まで上がる際、あたしが抱いていた疑問と同じ事を榊さんに言われた。


まず…建物内にかかる音楽が、優雅なクラシック。


派手な雰囲気の若者や店員はいない。


特に女子中高生と思われる客は――


膝下スカート、白ソックス。

黒髪は肩までかかれば、2つ結いかポニーテール。


漏れ聞こえる言葉遣いは、丁寧な標準語。

古きよき時代の女学生のようだ。


渋谷の…更にこの場所には、あまりに不似合いの女生徒達。


あたし達の方が、余程"イマ系"だ。

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