シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
見れば、いつの間にやら、煌が不貞腐れたように座り込んでいる。
「いるなら助けなさいよ、暴走するドS飼い主止めるのも忠犬の役目でしょ!!?」
「……。何かよ、櫂ってすげえ奴だよな、今更ながら」
なぜ賛辞になるのか判らないけれど、褒めている割には煌の顔は怖いくらいに陰鬱で。
かなり苛立っているように、ぴりぴりとした空気を纏っている。
「芹霞にあんなことやこんなことされて、じっと耐えるなんて芸当、到底俺には出来ねえ。だけどよー」
そして細められた褐色の瞳。
「お前ら――
俺居るのに、イチャイチャし過ぎなんだよッッ!!!」
突如声色を荒げ、攻撃的な鋭さを交えて。
「お前らが俺と出会う前の4年間、どんな風にこの家で過ごしたのか俺は知らねえ。だけどよ、櫂。…今此の家は、お前じゃなく俺の家なんだ」
漆黒の瞳に、睥睨する褐色の瞳が真っ直ぐに突き刺さる。
「俺の…モンなんだよ!!!」
まるで火花を散らしているかのように、櫂と煌の視線が烈しくぶつかっている。
煌は何で此処まで強く、この家の所有を主張したがるのだろう。
そして。
苦渋に顔を歪ませた煌は、ふい、と櫂から顔をそむけた。
「怒鳴って悪い。だけどよ、俺の領域で…好き勝手やらねえでくれ」
弱々しく言い捨てると、部屋から出て行ってしまった。
「何…煌、どうしたんだろ?」
判らないのはあたしだけだったようで。
櫂は――
切なげな眼差しを、煌が出て行ったドアに送っていた。