シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
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「おはよう、芹霞」



慣れ親しんだ我が家で、朝からほっこりする極上の笑顔。


部屋に漂うは、芳しい料理の匂い。



「パンの数が足りなかったから、お粉借りて桜とロールパン作って焼いたんだ。勝手に台所や道具、冷蔵庫の材料を使わせてもらったよ?」



ああ、玲くん。


絶対、貴方はいい嫁になる。


窓から差し込むお日様の光に、玲くんがきらきら輝いているよ。



朝からあたしは幸せだ。


櫂の家とはまた違う、癒しがある。


外は寒い季節に入ったというのに、家の中はぽかぽか暖かい。


櫂も居て、珈琲を入れてくれる桜ちゃんも居て。


玲くんの手作りパンに舌鼓を打つ由香ちゃんも居る。


「ああ、おいしい。どうして同じ道具使って同じ材料使っていて、こんなに玲くんが作るものは何でもおいしいんだろう。何だか今日はまた、一段とおいしくて泣きそう。玲くんこのまま、ウチに住んで?」


思わずそう言うと、


「ん…。いいの?」


少し斜めに首を傾げ可愛く微笑まれた。


何だか期待持てる玲くんからのお返事に、


「うんうん是非…「駄目駄目駄目~ッッ!!!」


橙色のワンコが、悲痛な叫びを上げて遮った。


「俺の家を占領すんな!! 我が家のメシは芹霞以外は許さねえ!!! 芹霞じゃねえと絶対駄目!!!」


何だか泣きそうだ。



「俺の家なのに、何で皆馴染んでるんだよ。勝手に動き回るなよ。此処はお前らの家じゃねえんだ!!! お前らは"お客さん"じゃ…」


あたしは――


子供のように駄々こねる煌の胸に、思い切り頭突きをする。

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