シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「煌。櫂や玲くん桜ちゃん、由香ちゃんを"お客"!!? いつも櫂の家を使わせて貰っていて、玲くんにおいしいご飯食べさせて貰っていて、何よその"お客"って!!!」
「でもここは俺の…俺達だけの家なのに…」
「煌ッ!!! 他の人ならまだ知れず、付き合いが長くてあたし達が大好きな人達なのに、どうしてウチに馴染んじゃいけないの!!! そんな心の狭い男なら、絶交だよッッ!!?」
煌は何かを言いかけて、ぐっと飲み込んだ。
「此処は…俺の唯一の…」
何だか目が潤んでいるようで。
煌が"家"に拘(こだわ)る意味が全く判らないあたしが、苛立って目を細めた時。
「…芹霞、いい」
それまで黙って成り行きを見守っていた櫂が口を開いた。
「確かに此処は芹霞と煌の家だ。俺の家じゃない。玲や桜、遠坂の家でもない。見知った家だからと、調子に乗りすぎていたな。突然押しかけて悪かった」
櫂が翳った顔で寂しそうに笑ってそういうと、煌ははっとしたように目を瞠って。
「玲、紫堂系列のホテルを探せ。当面の間、そっちで暮らす。本家だけはごめんだからな」
「ちがっ!! 俺は追い出したいわけじゃ…」
「……。了解。連絡いれてくる」
玲くんが席を外そうとしたから、あたしは思わずその腕を掴んで、
「最低ッッ!!!」
煌の頬を平手打ちをした。
「櫂!! そんなことしなくてもいいから!! ずっとウチにいてよ、皆で。櫂達はお客さんじゃないの、もっともっと親密な間柄じゃない!!! 遠慮一切なしに居てよ!!!」
だけど櫂は苦笑するだけで。
玲くんも悲しそうに微笑むだけで。
「あたしは拒んでいない。行かないで、ねえ行かないでよ!!!」
あたしは。
本当に嬉しかったんだ。