シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ん?」
玲くんが可愛く聞き返した時には、指と指を絡ませた"恋人繋ぎ"に変わっていて。
多少その形には免疫がついているとは言えど、親指でナデナデされてしまえば…。
あまりに…大切なものに触れるように、優しく触られては…。
何故か無性に恥ずかしくなったあたしは、火が吹いた顔を玲くんに見せたくなくて、誤魔化すように俯くしか出来なくて。
そんなあたしを見て、意地悪玲くんが既に状況を悟っていて、笑いをかみ殺しているのが気配で判る。
――じゃあ何で、僕の言葉を冗談に思ってしまうの?
やっぱりあたしは、玲くんにからかわれていると思う!!!
そう意を決して、反論を試みようとした時。
玲くんの全ての動きが――
突如止まった。
そして――
「芹霞。ちょっと走るから」
「え?」
見上げた端麗の顔は、警戒に強張っていて。
鋭さを増した鳶色の瞳は細められ、真横のビルの硝子に映った何かを見ていた。
「……右後ろに1人。そこから更に左後方に1人。
黒服の男達…素人じゃないな。
胸の膨らみ…銃でも携帯しているか」
そんな物騒な事を言い出して。
「少し前からつけられている。撒くからね」
「ふへ!?」
そしてあたしは――
そんな状況でも手を離そうとしない玲くんに、ずるずると引き摺られるようにして走った。