シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
目の前では、あたし達の姿を見失った黒服の男達が、右往左往している。
玲くんは薄く笑うと、短く口笛を吹いた。
そしてあたしに身体を低く丸めるように指示すると、同時にこちらを振り向いて飛び込んできた男の懐に潜り込み、あたしの頭上すれすれの高さにある相手の拳をかわしながら、手刀を脇腹にあてた。
呻き声を上げて崩れた男の姿を見て、少し離れた場所から、もう1人の男が慌てて懐に手を潜らせた。
銃!!?
玲くんは道脇にあった少し大きめの石を拾って、真上に高く投げると。
「!!」
長い足で持って、それをサッカーのボレーシュートのように宙で蹴りつけ…黒光りする銃身を構えた男にそれを叩きつけた。
石は男の手に命中し、声を上げながら手を押さえて銃を落とす。
あ、ありえない位置に…指が曲がっているような?
…上着のポケットの中では、玲くんの片手はあたしと手を繋いだまま。
何と呆気なく。
早いというのか、鮮やかというのか。
相手の攻撃など見る間もなく。
「相手は、普通の人間だからね」
普通じゃないモノと戦ってきた玲くんにとって、現実世界の"刺客"はこんな程度らしい。
さすがは、煌や桜ちゃんを率いる警護団の司令塔。
そしてすたすたとその男の元に赴き、拾い上げた銃を手で弄くりながら、にっこりと…"えげつなく"笑った。
「ねえ、誰の命令?」
男は手首を押さえながら…戦意を失ったのか、玲くんの顔を見て青ざめている。
「狙ったのは僕? それとも紫堂?」
くるくる、くるくる。
玲くんの手で、銃が宙にくるくる舞い踊る。
見事だ。
大道芸人のようだ。