シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
当然のように芹霞さんの気分を損ねて、完全無視されて。
いつものヘタレ具合に更に輪をかけてヘタレて、耳を垂らせて尻尾をふりふり…男として情けない姿で芹霞さんのご機嫌伺っても上手くいかず、櫂様に謝っても、翳った顔の櫂様に…逆に謝罪の言葉を貰う有様。
お優しい櫂様は、煌の気持ちをよく判っているから…頑(かたく)なにその心を汲み取ろうとしているのだ。
己の蒔いた種とはいえ、此処までの事態を想定できなかったその浅慮な言動に、居たたまれない風体で、酷く落ち込んだ馬鹿犬は、ふらふらと2階の自室に篭ったきり、出てこなくなってしまった。
子供か!!!
「気持ちは判るんだけどねえ」
遠坂由香は苦笑した。
「だけど、ヘタレワンコだよねえ」
全くその通り。
櫂様はぼんやりと、懐かしそうに窓の外の景色を眺めていて。
きっと昔も、こうして外を眺めていたのだろうか。
櫂様は、滅多に神崎家に赴かない。
久々の神崎家で、一体何を思っているのだろうか。
煌が居なかった昔、櫂様はどのように此処でお過ごしになったのだろうか。
そして独占権を主張する煌を、どう思われているのだろうか。
私はすくっと立ち上がった。
「葉山?」
遠坂由香の声を無視して、私はずんずんと2階にあがっていく。
そして煌の部屋の前に立つ。
ノブを回すと、鍵をかけているようだ。
でかい図体して、引き篭もりか!!!
私は深呼吸を1つして。
「――いい加減に…
しやがれ、この腐れ蜜柑が!!!」
私が思い切り蹴り飛ばしたドアが、
部屋内部に倒れ――凄い音を立てた。