シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

倒れた分厚いドアはベッドを直撃し、馬鹿蜜柑が恐怖の顔つきで壁に張り付いている。


僅か数cmで惨事を免れたようだ。


「と、突然何だよ、俺殺す気かよッッ!!!」


「……ちっ。もう少しだったのに」


「何だよ、その舌打ちッッ!!!」


顔の青さと鮮やかな橙色。


何とも奇妙な組み合わせ。



「いつまでふてってやがる!!!

――…来いッッ!!!」


私1人がドアを踏みつけ歩いても平気だったのに、煌の胸倉掴んだまま足を動かした途端、木製の足場は悲痛な破壊音を奏でて、穴が開いた。


どこまで巨体なんだ、この男。


巨体なら巨体らしく、もっと豪胆でいればいいのに。



「やだ!! もう俺…櫂にも芹霞にもあわす顔がねえ!!」


どうして巨体の中の肝は、こんなに小さくて女々しいのだろう。


私は大きな嘆息1つしてから、



「いい加減に――


しねえか、てめえはよッッ!!!」



持ち上げたままの煌の身体を、思い切り床に叩きつけ、うつ伏せに落ちたその腰を思い切り足で踏んづけた。


「お、おま…なんでまた…俺の股間…」


涙声が聞こえてくる。



「ひっくり返して踏み潰してやるか、ああ!!?」


すると橙色の頭は、ふるふると横に振られた。



「お前…何でまたキレるんだよ。キレねえように、緋狭姉に言われてるんじゃなかったのかよッッ!!?」


「元よりてめえに関しては、緋狭様から"思い切りやれ"と許可貰ってたんだよ!!! 今まで我慢に我慢重ねて大人しくしてたのは自分で修業だと耐えていただけ。

それをてめえの馬鹿さ加減がッッ!!!

どう責任取るんだ、この駄犬がッッッ!!!」


「ひ、ひでえ…皆してひでえッッッ!!!」



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