シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
こうなったら、とことんやってやる。
この情けない馬鹿蜜柑に、我慢などするものか!!
「さ、さくッ…お前、本気で暴れるなッッ!! こんな処で修業の成果を見せるなッッ!!!」
「うるせえッッ!!! お前見てるとな、イライラが治まらないんだよッッ!!! 身体全体が痒くなって仕方がないんだよッッ!!!」
「お前風呂に……」
「てめえ、死にたいか、ああ!!?」
逃げ回る馬鹿蜜柑を追い回し、狭い部屋の中ぐるぐると廻りながら、やはりいつもの…パターン化してしまった状況に陥ることを嘆きつつも、それでも何処か爽快とした気分を味わっている私は、後方で囁かれていた会話に気づかなかった。
「ほら、ね? 紫堂が心配することないんだよ。如月には、ちゃんとお節介な教育係がついているんだから。ストレスには暴れるのが一番なのさ。仲間思いの葉山がついているんだから、紫堂と如月の友情には、絶対ヒビなんて入るはずないよ? 暴れてすっきり。後は紫堂の懐の大きさ見せれば、元通り。紫堂と如月が元に戻れば、神崎とだって元通り。君たちは単純明快だからね」
「……。何だか…羨ましいな、あの2人」
「ほう? 紫堂がそんなこと言うなんてね。だったら参戦してきたら?」
「いや…俺は桜にもう殴られたくない」
「あれはゲームだろ? 何だよ、けろりとした顔してたくせに、キてたのか?」
「怒りより…ははは。結構、痛かった」
「うぷぷぷ。主の矜持かい? 君も素直じゃないからねえ。葉山とは敬遠したいなら、如月と喧嘩してみればいいじゃないか。したことないんだろ? いい機会だ。友情暖めろよ」
「遠慮しておくよ。今回に限って言えば、煌の気持ちが判るから。何かの絆に縋りたい、その気持ちは。玲だって判っているはずだ。
だから…やっぱり俺達は、皇城に会った後、此処を出る」
「……でも神崎も如月もついていくと思うよ?」
「多分な。それでも俺はあえて煌を刺激したくない。特にこの家に関することで」
「紫堂……?」
「……。この話はここで終了だ。遠坂、調査の進み具合を知りたい」
「了解。師匠に頼まれてることもあるし、じゃあ1階に戻ろうか」
…そうして去って行ったのも知らず。
周りが見えていないなど…私のストレスも溜まりまくっていたらしい。