シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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――あの後。
流石の体力自慢の煌も、逃げて叫んで私にぼこぼこに殴られて…余程体力を消耗してしまったのか、肩で息して動きが鈍くなった。
私は頃合いだと思い、巨大な馬鹿の襟首をむんずと掴んで、宙高く持ち上げたまま、部屋を出た。
階段に差し掛かる時、手間のかかる馬鹿は…宙に浮いた足を忙しく動かして、ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃん反抗的に吼えたから。
まだそんな元気があるのかと無性に苛ついて、階下に一気に放り投げて怒鳴った。
「男なら潔く覚悟を決めろッッ!! このままずっと櫂様から逃げ続けるのか、てめえ!!? てめえがしでかした今の状況を何とかしたいなら、何とか出来るまで逃げずに必死に闘えッッッ!!! 後ろ向くなッッッ!!!」
階上から腰に両手をあてて叫ぶ私は、きっと"仁王立ち"状態なのだろう。
それ故なのか、それとも覚悟を決めた為か。
多少怯えの混ざった顔を、やがてきりりと引き締めて、私にこくんと頷いた。
その口は何の為にあるんだ!!!
――と、続けて怒鳴りたくもなったけれど、それが今の煌の精一杯ならばと、私は譲歩することにして、どすどすと足音立てて階段を下ると、頭をひと撫でしている馬鹿蜜柑を、ドアが開かれている居間に蹴り飛ばした。
「わ、わわわ!!!」
居間では、櫂様と遠坂由香が、パソコンの前で紙を持って、真剣に話し込んでいた。
ああ、私は。
こうした"現状"の真剣話に参加もせず、ひたすらこの馬鹿の相手をしていたのだと思うと、本当に自分が情けなく…そして私を含めた"役立たずの部下"に、忸怩(じくじ)たる思いが込み上げて、思わず唇を噛んだ。
「櫂、すまんッッ!!!」
その横で土下座を始めた橙色。