シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「本当に俺が悪かった!!! お前は"お客さん"じゃねえから。あれは適当この上ない、衝動的なただの戯言だ!!! だから…」
以前と同じような台詞だけれど、込められた強さと真剣さがまるで違う。
櫂様の顔色を極度に窺い、完全逃げ腰なのがはっきり判った…苛つくあの馬鹿犬姿ではなく、そこには本当に反省の色とその責めを負うだけの覚悟が出来ていて。
本当にこの馬鹿は、こちらの予想を遥かに超えて突然変化する。
出来るなら、さっさとすればいいのに。
櫂様は――
ソファに座ったまま微笑んだ。
「判っているよ、煌。俺達は8年来もの幼馴染だろう。それくらい、俺が判らずにいてどうする?」
途端、褐色の瞳が潤んで。
「櫂~~ッッ!!!
俺、お前が大好きだ~ッッッ!!!」
櫂様に抱きついて、おいおい泣きついた。
ああ、やはり――
この男は馬鹿だ。
普段は凄味ある精悍な顔で、平然とヤクザの組を丸ごと壊滅してくるくらいなのに、どうして心許した相手には、ここまで変貌してしまえるのか。
何処をどう見ても、"男"として恵まれた外貌のくせに、何で内面も、もっとしゃきっと、きりっと出来ないんだろう。
こんな巨大な男に抱きつかれて、更には"大好き"を大声で連呼される櫂様の心情を、どうして察することが出来ないのか。
だけど。
櫂様は、先程まで端正な顔に覆われていた翳りが薄れ、嬉しい…というよりは照れたような顔つきで、煌の肩をぽんぽんと叩いていて。
流石は櫂様、器が大きい。
ひとまず、櫂様と煌との間は亀裂が入っていなかったことだけでも確認できて、私は胸を撫で下ろす。
別に煌が、櫂様に見捨てられて野垂れ死にしようが一向に構わないが、少なくとも櫂様の気分を損ねたままで逝って貰いたくない。
ちゃんと責任だけは取ってもらいたい。