シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「葉山も素直じゃないよね~」


私は何も言っていないのに、遠坂由香がにやにやとした顔で、小さい声をかけてくる。


「紫堂が如月を見捨てても、葉山は見捨てられなかったんでしょ?」


「な!!!」


突然意味不明で理解不能なことを言い出した遠坂由香。


私の口から漏れたのは、否定ではなく動揺の声であったのが、私を必要以上に驚嘆させた。


「でも紫堂が見捨てないこともよく判ってる。

だから"繋ぎ"に行ったんでしょ? いい子いい子~」


頭を撫でられた。


しかも三日月形の目で。


唖然としてその行為を甘んじた私は、そしてはっと我に返り、その手を振り払って反論しようとした時、


「なあ…七不思議、どうしてワンコ?」


机の上に置かれた…恐らく玲様が設定された、プリンタからの印刷物らしい紙を覗き込んで、煌が嫌そうな顔をした。


「遠坂…俺への嫌味?」


「ちゃうちゃう!!! それが定番となってるんだってば!!!」


「だけど、何で6つの内、半分もワンコ? やっぱ、嫌味?」

「ちゃうちゃう!!」


遠坂由香は七不思議の内、6つを調べていたらしい。


あの紙にはそれが書いてあるらしい。


「やっぱ俺のことワンコだって思ってるんだろ、お前ッッ!!!」


「そうだけど…これは違くてッッ!!!」


「だから俺は、ワンコじゃねえんだよッッ!! この紙…俺への冒涜だッッ!!」


「違うって、如月の被害妄想だってば!!」


どうしても同種の"ワンコ"に食いつきたいらしい馬鹿ワンコ。


他に考えるべきものはないのだろうか。


私もその紙を覗き込んだ。


長々と説明が書かれていたが、要約すれば。


1.9つの神社の神主巫女の野犬による惨殺。

2.渋谷ハチ公と上野の西郷隆盛の犬の像の破壊

3.各箇所の地蔵像の破壊と悲鳴、野犬の死骸。

4.桜華の女子生徒の猟奇事件。

5.4つの陥没。

6.サンドリオン。

< 198 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop