シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「葉山も素直じゃないよね~」
私は何も言っていないのに、遠坂由香がにやにやとした顔で、小さい声をかけてくる。
「紫堂が如月を見捨てても、葉山は見捨てられなかったんでしょ?」
「な!!!」
突然意味不明で理解不能なことを言い出した遠坂由香。
私の口から漏れたのは、否定ではなく動揺の声であったのが、私を必要以上に驚嘆させた。
「でも紫堂が見捨てないこともよく判ってる。
だから"繋ぎ"に行ったんでしょ? いい子いい子~」
頭を撫でられた。
しかも三日月形の目で。
唖然としてその行為を甘んじた私は、そしてはっと我に返り、その手を振り払って反論しようとした時、
「なあ…七不思議、どうしてワンコ?」
机の上に置かれた…恐らく玲様が設定された、プリンタからの印刷物らしい紙を覗き込んで、煌が嫌そうな顔をした。
「遠坂…俺への嫌味?」
「ちゃうちゃう!!! それが定番となってるんだってば!!!」
「だけど、何で6つの内、半分もワンコ? やっぱ、嫌味?」
「ちゃうちゃう!!」
遠坂由香は七不思議の内、6つを調べていたらしい。
あの紙にはそれが書いてあるらしい。
「やっぱ俺のことワンコだって思ってるんだろ、お前ッッ!!!」
「そうだけど…これは違くてッッ!!!」
「だから俺は、ワンコじゃねえんだよッッ!! この紙…俺への冒涜だッッ!!」
「違うって、如月の被害妄想だってば!!」
どうしても同種の"ワンコ"に食いつきたいらしい馬鹿ワンコ。
他に考えるべきものはないのだろうか。
私もその紙を覗き込んだ。
長々と説明が書かれていたが、要約すれば。
1.9つの神社の神主巫女の野犬による惨殺。
2.渋谷ハチ公と上野の西郷隆盛の犬の像の破壊
3.各箇所の地蔵像の破壊と悲鳴、野犬の死骸。
4.桜華の女子生徒の猟奇事件。
5.4つの陥没。
6.サンドリオン。