シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
意識無くした男を眺めている玲くんの笑みは、酷薄めいていて。
背筋に何か冷たいモノが上ってきたあたしは、反射的に手を離そうとしたのだけれど、玲くんはそれを許してくれなかった。
逆に不服そうに向けられる、僅かに細められた鳶色の瞳。
「何で――
手を離そうとするの?」
何かを押し殺しているような、唸るような低い声。
思わず怯んだあたしは、咄嗟に作り笑いをした。
だけど即席の作り笑いなんて、年季が入りすぎてる本家本元…十八番(おはこ)の玲くんに敵うはずはなく。
「て、敵は玲くんやっつけたし、ほら…運動して温かくなったし、もう繋ぐ必要が「温かくなったのなら、ポケットから出そうか」
にっこり。
やはり手を離そうとしない。
「あのね…玲く「うん、先刻まで冷たかった風が、気持ち良くなったね」
にっこり。
「これから人と会うんだしね、もう…「あ、時間だね。早く行かなくちゃ。さあ行こう? 芹霞」
にっこり。
「あのね、もう手を「行こう?」
にっこり。
その微笑みは、問答無用とばかりの威圧的な強制力を持って。
「そ、そうだね…」
そして。
あたし達は恋人繋ぎをしたまま、駅に向かった。