シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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「玲さん!!!」
満面笑み…かどうかは、前髪に隠されてよく判らないけれど、中野駅で黄色いワンピース姿のお下げの少女が立っていた。
嫌に"何か"の記憶を刺激する洋服だけれど、どんな記憶なのかはよく判らない。きっと大したことはないのだろう。
「貴方が、上岐妙…さん?」
しかし少女は、質問したあたしを完全無視して、
「玲さん!!! 助けて頂いてありがとうございました!!! やはり貴方は私の"王子様"です!!」
そうか。そういうことか。
彼女は玲くんが好きなんだ。
助けて貰って、恋に落ちた…王道パターンだろうか。
思わずにやにやして玲くんを見たら、玲くんはこちらを向かずして、繋いだままの手に思い切り力を込めてきて。
「!!!!」
痛い、痛いよ、玲くんッッ!!!
彼は、あたしだけに判る小声で言った。
「ごめんなさいは?」
小声なのに、何だろこの威圧感。
「…ごめんなさい」
ぼそっと呟いたら、
「良くできました」
力から解放された。
優しい玲くんが、凶暴化している。
何たる事態だ。
これもきっと、我慢強い玲くんに極度のストレスを植え付けた、あの青い男のせいに違いない。
絶対そうだ!!!