シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


優しい玲くんらしくない。


どう見ても玲くんに好意以上の心を向けてくる少女相手に、恋人繋ぎは酷すぎるだろう。


更にはあたしは、玲くんの"彼女"でも何でもないのだし。


じゃあどんな関係と聞かれれば、いつも色々お世話になりすぎている玲くんを、同等の立場で"友達""仲間"と呼ぶには烏滸(おこ)がましく。


あたしもある意味、由香ちゃんと同じ"弟子"みたいなものなのに、玲くんを師匠と呼んだことない不届き者だし。


あたしと玲くんって、一体どんな関係なんだろう。


家族感覚は多々あるけれど、あたしと血の繋がりはないし。


お兄さんみたいなモノだけれど、それよりもっと身近だし。


"幼馴染の従兄"

"従弟の幼馴染"


無難すぎるけれど、それしか言い様がないのが現実だ。


もっと玲くんと仲良くなれたら、何か違う呼び方が出来るのだろうか。


そんなことを色々考えていたら、


「お返しする前に…ちょっと…あ、あそこの…喫茶店でお茶…でも飲みませんか?」


そう…か細く言った少女の足が、小刻みに振えていて。


どうしても玲くんとの接点を失いたくないのに、必死になっているのが判る。


「何で?」


いつもの聡い玲くんなら判っているはずなのに、やはりその声は冷たくて。


まさか、あたしがいるから…素直に好意に甘んじられないとか?


――僕は軽い男じゃない。


もしかして、玲くん気にしてる?


そうだ、きっとあたしがいたら、やりにくいんだ!!!


あたしはお邪魔だ!!!

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