シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
居たたまれない。
和やかな会話はおろか、穏やかな空気さえ流れてこない。
無言。
至って空気が悪い。
店内に流れる、軽快なピアノ曲"子犬のワルツ"が、そんなあたし達を嘲笑う、げらげらとした甲高い笑い声に聞こえてきて、腹立たしい気分になる。
駅と隣り合わせにある、小綺麗な煉瓦造りの喫茶店。
店の内外、玲くんに見惚れる女性が続出するのは想定内として、重々しい3人の雰囲気から…絶対"3角関係"の縺(もつ)れだと思われている。
客や店員問わず、ひそひそとした声。
舐めるような、視線。
皆様、あたしは無関係です。
目の前のテーブルには、店員が置いて行ったばかりのアイスティー3つ。
ストローの袋さえ、手を繋がれたままだと破ることが出来ず、更に自由なのは左手の方で。
かといって、繋がれた右手はどうしても離れることないし、わざわざ見せつけるように机の上に持ち上げる度胸もなく。
袋が破けず苦戦しているあたしを見て、玲くんは
「貸して?」
微笑みながら、右手で器用に袋の端を破き、顔を出したストローを口に含むと、一気に袋を破きさる。
そして、グラスに挿してくれたけれど…玲くん、このままあたしが口つけたら、間接キスになっちゃうよね。
あたしでも気付くことを、玲くんが気付かないはずはない。
もういいや、この場の空気を更に悪化させない為に、細かいことは気にしないことにしよう。
「あ、シロップもいるよね?」
もう何でも判っていますと言わんばかりに、玲くんはにこにこしながら片手で器用に…いつも通りの至れり尽くせり。
普段甘やかされているのがばればれの姿を、公衆の面前でばらされ、何とも恥ずかしい。
「で、話って何?」
そしていきなり、玲くんが本題。
告白だったらどうしよう。
少女は、俯いたまま…何も言わずにいる。
そのつもりだったのか。
それなら少しでも2人にさせてあげようと、そろそろと…椅子を離れさせたあたしに気づき、玲くんはまた手で強引に引き寄せる。
おかげで、まだ手を繋いでいるということがばれてしまって。
玲くん、これ…どんな羞恥プレイ!?