シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「芹霞、あたし何か悪いこと言ったか?」
あたしの左側に身を低く乗り出して、びくびくした顔で紫茉ちゃんが小声で言った。
「何か、今日玲くんのご機嫌が悪くて。いっつもほっこり優しいのに、今日はこうして離してくれないの…。まるであたしが"猛犬"よ」
すると紫茉ちゃんは何かを悟ってくれたみたいで。
「芹霞も色々大変なんだな…。
判るよ、理不尽なことで拘束される苦労」
それは、哀れみ籠もった優しい眼差しで。
「紫茉ちゃん…。やっぱりあたし達、似ているね」
友情を温めたあたし達の横では、ようやく上岐さんが口を開いてくれて。
「ご相談があるんです」
それは切羽詰まったような声で。
あたしは紫茉ちゃんと共に、彼女を窺い見た。
彼女は意を決したというように、顔を上げて玲くんを見ていて。
どんな表情なのかは、前髪で判らない。
「私を…助けて下さい。
もう…人を殺したくないんです」
それは悲痛な声で。
「「!!?」」
あたしと紫茉ちゃんは顔を見合わせた。
もう人を殺したくない…って、
人を殺しましたっていう告解?
ごくん、と唾を飲み込んだ。