シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
玲くん…。
そんなに真っ直ぐ、あたしを見て言わないでよ。
完全勘違いさせてるよ?
それとも…諦めさせるダシに使っているのかな。
あたしは困ってしまった。
「さあ、手帳を返して頂戴」
それはもう…話は終わりだという合図のように。
そして唇噛みしめながら、上岐妙は手帳を渡して…
「玲さん…私、諦めません。貴方だけが…私の救いだから」
そして立ち上がった。
「いずれ、また」
退出した少女を一瞥すると、玲くんは心底疲れたように、テーブルに右肘をつけながら、項垂れ気味の端麗な顔を覆った。
「意外。玲くんが…ここまで女の子を拒むなんて」
すると、ゆっくりと鳶色の髪が動いた。
「僕だって、人を見る目はあると思うよ? 特にあの子は…危険すぎる」
そうかなあ。
「拒んだ理由は、それだけじゃないけどね」
そして、繋いだままの手にぎゅっと力を込められた。
「意味――…
――…判って?」
切なげな目が寄越されたけれど、馬鹿なあたしに意味など判らなく。
そんな時、腕組みをしていた紫茉ちゃんが呟いた。
「確かに…怨霊に取り憑かれて人を殺しましたなんて、ありえない話だけれど」
そして目を細めて。
「だけど…あたしの夢と一致する。葬式…憎悪、絞殺。あれは…あたし自身が噂話に影響されたものではなく…上岐先輩の夢に同期(シンクロ)していたものだったのか?」
「へ?」
紫茉ちゃんの呟きが、よく理解出来なかった。