シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
玲くんは――

訝しげな顔を紫茉ちゃんに向けて。


「……。ねえ、君はもしかして、何か力が…」


"力"?


力って、玲くんや櫂みたいな…超能力?


「"力"で思い出した!!!」


突如叫んで立ち上がったのは紫茉ちゃんで。


「翠…翠を見なかったか!!?」


「小猿くん? 見てないけど…」


「あいつ…勝手に人のメールを見て、芹霞の住所を盗み見して、あたしより早くに家を出たみたいなんだ。

だからあたし、慌てて追いかけてきたんだけれど、反対側の電車に乗ってしまったから…翠を見失って見つけられないんだ」


そして。

紫茉ちゃんは、凛とした眼差しをあたしと玲くんに向けた。


「玲…あんたも"紫堂"の者なんだな?

翠は、紫堂を憎んでいる。

だから多分…

乗り込んだんだろう。


単身…紫堂を殺すつもりで」


「はい!!?」


「昨日、何度も言い聞かせて説得させたはずだったのに…結局何も聞いちゃいなかった。芹霞、紫堂櫂に連絡取ってみてくれないか!!?」

あたしは、玲くんと顔を見合わせた。


「翠は虚勢張ってばかりの口だけ男だが、唯一自慢出来るものが1つある。あたしは見たことはないが、もしいつも自慢するあの"力"を使っていたら、紫堂櫂がやばい!!!」


何だか判らないけれど、あたしは慌てて櫂に電話した。
< 217 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop