シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
芹霞に話しかけようとしたけれど、芹霞は七瀬と共にあれこれ話し込んで、ばたばた忙しく動き回り、工具やら掃除用具やらの用意していて。


こんな時に迂闊に話しかければ、"口利かない"が"絶交"に変わるのも目に見えている。


俺が早く関係を修復したいと思っていることすら、芹霞は気付いていないのかと思えば、凄く遣り切れないけれど。


修繕より俺を気にして欲しいのが本心だけど。


仕方がねえ、後にしよう。


張り手ぐらいで終了できれば、御の字だけれど。


不安と恐れの入り交じった俺の溜息に、櫂の声が被さった。


「――あれらは何だ?」


ソファに座った櫂が、小猿に聞いている。


「ふん!! 誰が答えるかよ!!!」


「おい、何だその口の聞き方は」


芹霞に冷たくあしらわれている俺としては、それがヤケに苛ついて。

小猿の尻を蹴り飛ばす。


「~~ッッ!!!」


玲に叩かれた後遺症が響いているらしい。前のめりに倒れたまま、動かない。


「答えねえと、またこの怖いお兄さんが今度は倍以上の力で叩くってよ?」


「ふふふ、倍なんて可愛いものじゃないよ?」


ばきばきと、玲が手の骨を鳴らせば、小猿がびくんと反応した。



「……だよ」


言いたくないというのがはっきり判る、投げやりな声。



「ああ!?」



「式だ、馬鹿ワンコ!!!」



「馬鹿とワンコは余計だ、小猿!!!」



ああ、可愛くねえ、このガキ。
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