シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「いいか、見ろ!!! この…手に置いたシャープペン!!!」


それはふわりふわりと浮いて、10cm程の高さで止まる。


普通――、

素人なら歓声やどよめきが起こるのだろうけれど…生憎俺達、普通じゃねえし、櫂や玲レベルともなれば、だから何っていう感じだろう。


力のねえ芹霞だって、反応に困っている。


見せつける相手を、取り間違っている。


「ど、どうだ…お前達みたいな下郎には、こういうことは出来ないだろう!!! どうだ、驚いたろう!!! 俺はこんなに高く持ち上げられるんだぞ!!?」


肩で大きく息をしながら、小猿があまりに意気揚々と得意げに言うから、俺はそのシャープペンをひょいと取り上げ、普通に高く持ち上げた。


「…こっちの方が、簡単で高いよな?」


するとキーキー怒り出し、今度は立ち上がった。


「お前達!!! 宙に浮けないだろ!!! 空中浮遊…どうだ!!!」


やはり。

10cmくらいの高さで、宙に止まったけれど。

確かに、宙に浮いているのは見て取れたけど。


何に役立つんだろう?


「……。桜、片足で、その場で軽く飛び跳ねてみて?」


「??? はい、玲様」


桜の軽い跳躍は、小猿の頭を超える高さと、宙における長い滞在時間を見せつけた。


再び、小猿はキーキー怒り出した。


「瞬間移動ならどうだ!!?」


そして小猿は、電源ポットのコードを引き抜いて、自らの両足首に括り付けて動けない状態にすると、テーブルにある30cm定規を手にして、動けない足先に、定規の端がくるようにおいた。


「見てろよ、瞬間移動は凄く精神力がいるんだ!!!」


確かに…自慢げに叫んだ小猿は、一瞬のうちにて定規の反対側に移動し、30cm先に移動したようだけれど。


「……」


目の前で、芹霞が閉じた両足で跳ねて、30cm定規を難なく飛び越えた。


「…その力、必要?」


首を傾げたら、小猿は泣きそうな顔で突っ伏した。


「そうやって、"誰でも出来る"って馬鹿にすんだろ!!! ああ、兄上!!! 俺、頑張って大十位になって、此処まで出来るようになったのに!!! 憎い紫堂に馬鹿にされました!!! 紫堂は酷い処です!!!」


小猿は、キーキー泣き出した。
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