シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
・変化 櫂Side
櫂Side
**************
何とも――
気が抜ける結果。
しかし。
俺の知る限りにおいて、式神の力は制御する術者の全潜在能力に等しい。
式神を7体出せるということは、皇城翠という少年の潜在能力は、俺が彼個人に感じる"力"の7倍は優にあるということで、そして彼を含めて1体1体の気を尚も高められるのだとしたら、更に大きな力を秘めているということになる。
彼が安定した力を持つ符呪使いになれば、俺とて無傷でいられなかっただろう。
彼が"脅威"となり得る器の持ち主だということは、恐らく本人は判っていないに違いない。
きっと彼に足りないのは、"実践経験"なのだろう。
それよりも先に、あの幾つかの"超能力"に満足してしまったフシがあるから、そこから先に進むだけの根気と精神力に至らないのだ。
皇城というのは、"符呪術"に対し生まれながらに"英才教育"される実践的な組織のはずなのに、仮にも皇城を名字として名乗る者が、何故こんな素人同然の反応を見せているのか俺にはよく判らない。
そして更に判らないのは、俺にずっと向けられている憎々しげな視線。
「なあ…どうしてお前、櫂を…紫堂を恨んでいるんだよ」
煌が聞いてもだんまり。
その隣で七瀬紫茉が困った顔をしている。
「翠。昨日だって、渋谷で紫堂櫂は助けてくれたじゃないか。芹霞を助けようと身体で庇った。あたしには残虐非道な男には見えないぞ?」
残虐非道?
「そんなの油断させるための演技かも知れないじゃないか!!! 兄上だけに飽きたらず、弟の俺まで"残虐非道"に変えようっていう魂胆かもしれないだろ!!?」
兄上…?
「なあ紫堂櫂。翠の兄…皇城雄黄(ユウキ)に何かしたか?」
七瀬の目はまっすぐに、俺に向いた。
澱みない、透き通るような目を。
**************
何とも――
気が抜ける結果。
しかし。
俺の知る限りにおいて、式神の力は制御する術者の全潜在能力に等しい。
式神を7体出せるということは、皇城翠という少年の潜在能力は、俺が彼個人に感じる"力"の7倍は優にあるということで、そして彼を含めて1体1体の気を尚も高められるのだとしたら、更に大きな力を秘めているということになる。
彼が安定した力を持つ符呪使いになれば、俺とて無傷でいられなかっただろう。
彼が"脅威"となり得る器の持ち主だということは、恐らく本人は判っていないに違いない。
きっと彼に足りないのは、"実践経験"なのだろう。
それよりも先に、あの幾つかの"超能力"に満足してしまったフシがあるから、そこから先に進むだけの根気と精神力に至らないのだ。
皇城というのは、"符呪術"に対し生まれながらに"英才教育"される実践的な組織のはずなのに、仮にも皇城を名字として名乗る者が、何故こんな素人同然の反応を見せているのか俺にはよく判らない。
そして更に判らないのは、俺にずっと向けられている憎々しげな視線。
「なあ…どうしてお前、櫂を…紫堂を恨んでいるんだよ」
煌が聞いてもだんまり。
その隣で七瀬紫茉が困った顔をしている。
「翠。昨日だって、渋谷で紫堂櫂は助けてくれたじゃないか。芹霞を助けようと身体で庇った。あたしには残虐非道な男には見えないぞ?」
残虐非道?
「そんなの油断させるための演技かも知れないじゃないか!!! 兄上だけに飽きたらず、弟の俺まで"残虐非道"に変えようっていう魂胆かもしれないだろ!!?」
兄上…?
「なあ紫堂櫂。翠の兄…皇城雄黄(ユウキ)に何かしたか?」
七瀬の目はまっすぐに、俺に向いた。
澱みない、透き通るような目を。