シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
この少年から漂い始めるのは、"王者の覇気"。
それは未熟なもので、まだまだ恐れるには至らないけれど、伊達に皇城の血は引いていないと言うことを証明している。
七瀬が言う"口だけは達者"で"虚勢"だけの、今までの様子から見れば、これはきっと彼自身無意識のもので。
凄く――
興味が湧いた。
この先、どう化けるのか。
俺の好敵手となりえるだろうか。
「……櫂、喜ぶなよ」
玲が俺の隣で、小声で苦笑した。
玲だって好奇の念を抱いて、そして考えているはずだ。
育つか、潰れるか。
否。
育てるか、潰すか。
「お前じゃなかったら、紫堂の誰だよ、兄上を変えたのは」
翠は俺を見据えたまま言った。
瞳からはまだ憎悪は消えてはいないが、警戒心は小さくなっている。
俺の嫌疑は晴れたらしい。
「なあ…どう変わったんだよ、お前の兄貴」
煌が、翠の前でしゃがみ込んで聞いた。
「大丈夫だって。櫂…いや俺達は敵じゃねえ。言ってみ?」
煌は…元来面倒見がいい。
あどけない笑いを見せる処を思えば、ああ…この少年に親近感を覚えたのか。
いい器を持っているのに"出来損ない"と思いこんでいる辺り…共感を覚えたのか。
「翠、言ったろう。あたしは人の見る目だけはある。大丈夫」
七瀬も後押しして。
「そうそう、あたしだって櫂達が極悪人だったら一緒に居ないから」
食卓に両肘ついてこちらを見つめている、芹霞もからからと笑い、向かい側に座る遠坂もうんうんと頷いて。