シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
すると、翠は俯きながら、ぽつりぽつりと話し始めて。
「……。温厚だったのに……親父みたいな大暴君になってしまった。権力に走り、逆らう者は"力"で排除して。誰からも恐れられるようになっちまった。今まで、兄上だけが出来損ないの俺を可愛がってくれていたのに…今じゃ親父のように、俺を虫けらを見るような目で罵倒する。居たたまれなくて…だから俺は皇城を出て、紫茉の処に転がり込んでいるんだ」
「まあ、実際…あたしの兄のような奴の家に、皆で居候しているだけだけど」
七瀬は快活に笑う。
俺は――
自分の親父を思い出して。
12年前。
紫堂の家から"不必要"と追い出された俺と俺の母親。
その時の、蔑んでいた親父の目を俺は忘れることはない。
そして8年前。
玲の…次期当主としてのお披露目会に、乗り込んだ俺を見た目。
そこから現在に至るまで。
親父の目を好意的に受け取ったことはない。
愛情を感じたことはない。
親父の目が全てを語っている。
俺と親父の関係は、"力"だけだと。
俺は親父の…紫堂の力が欲しいが為に、次期当主という息子になっただけ。
そこには血が取り持つ、愛情は一切なく。
その心を、翠も味わっているのだろうか。
「それ、いつからよ?」
煌が再び聞いた。
「2ヶ月前の…あの、自然災害の東京の大事故に親父も兄上も巻き込まれ、……植物人間状態だった。1ヶ月前くらいに兄上がようやく目覚め、3週間前に退院できる程回復し、ようやく日常生活に戻れたと思ったら…豹変してた。
心が――無くなっていた」