シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
俺は文より声が聞きたい派だから、芹霞の求めるような…感情を露骨に表す絵文字・顔文字の類の使用は、どうしても躊躇してやめてしまう。
…一応画面に出してはいるんだ。
だけど…やはりそのまま送信ボタンを押せない。
どうしても親指が動かない。
大体"(*´∀`*)"だの"(´ε`*)"だの…俺のキャラか?
伝えたいことは山にあるけれど、どうせそれも氷皇を含めた皆の目に晒されるのなら、俺はこんな時にこんなものではなく、芹霞と2人だけの時にちゃんと伝えたい。
――という俺の心…芹霞は判っていてくれてるんだろうか。
絵文字・顔文字だけが、俺の真情じゃない。
行間を読み取れとまでは言わないから、せめて…判ってくれよ、俺の想いを。
一応、メールポイントは赤くしたけれど。
赤くしないと、絶対見過ごされそうだから。
俺の居ない間に悪い虫がついていないだろうか。
考えるだけでも不安で不安で仕方がない。
もう…こりごりだ。
少し前まで、芹霞がハマッていた人気バンド"Zodiac(獣帯)"。
大した奴らでもないのに、芹霞は朝から晩までうっとり顔。
前触れもなく、突然言い出して…とことん夢中になったんだ。
俺の…俺達の存在など、忘れてしまったように。
頭にきた俺らは、学園祭のシークレットゲストである彼らを潰した。
それ以来、芹霞は口にしない。
ようやく落ち着いたはずだったのに、続けて直面している今こんな状況。
今…変な男に夢中になっていないよな?
それさえ今は、確かめる術がない。