シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
そんなあたし達に構わずして、


「紫堂如きが…!!! 引きなさい!!!」


低い…威嚇のような声がして。


コートの男が、小猿くんを庇うように立ち、


「紫茉を使って…翠くんを取り込みにかかるつもりですか!!!」


「ああ!?」


煌の機嫌が急降下したのがよく判る。


「翠くん。騙されないで下さい。星見鏡を返すと言って翠くんを呼び出して、返す気配がないのがその証拠!!!」


何だか、誤解している?


「用意周到ということですか。渋谷同等…誘い込む気ですか」


男の視線が、櫂から僅かに逸れて。


一瞬だけだったけれど。


男はテレビの方を見た気がした。


小猿くんの分身が電源をつけたままのテレビには、Zodiacのライブの生中継が流れている。


何だ?

Zodiacが好きなのか?


しかしその顔は侮蔑に歪んでいて。


好意的と言うよりは、嫌悪の情の方が強そうだ。


櫂も煌も玲くんも。桜ちゃんもZodiacは好きではないらしいし、更にはこの男まで嫌われるとは、"美貌"とは相性悪いのか。


そう思っていた時、隣の紫茉ちゃんが不快そうに目を細めて。


「どうしたの?」


「何か…聞こえないか?」


聞こえるのは…テレビから流れるZodiacの曲で。


「歌……?」


紫茉ちゃんが呟いた。


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