シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
それに気付いたのは、あたしだけではなかったみたいで。
「何で連日、制裁者(アリス)が此処を襲うんだよ!!?」
煌が叫びながら、偃月刀を振り回す。
「…番号持ち…ではないね。目は赤くはないし…何より動きが緩慢だ。あの程度だったら…煌と桜なら、3分で鎮圧出来るだろう」
玲くんは、そう笑った。
実際、あたしが見る限りにおいても、さして苦戦の様子はない。
「弱い雑魚制裁者(アリス)ってのもいたんだ」
「2ヶ月前に会った奴らよりは弱いだろうが…煌と桜が強くなったのも事実。修行の成果だな」
そう、櫂は満足気に笑ったから、つられてあたしも笑った時。
「…お出ましか」
そう低く呟いたのは…紫茉ちゃんと小猿くんを腕に抱く男からで。
そしてあたしは。
「!!?」
何処からか――
ぞくりとしたものを感じ、あたしはそれを特定しようと、きょろきょろ周囲を窺った。
櫂も何かは感じたようだけれど、方向を見定めるにまでは至らないようで。
制裁者(アリス)を制圧した2人も…目だけ動かし警戒心を強める様子から、その正体を掴めていないのだろう。
例外は――
玲くんと男だけ。
あたしと同じ方向を見つめていて。
――蝶、だ。
榊さんと、渋谷で少女の目を抉った…黄色い蝶が現れたんだ。
玲くんが叫んだ。
「結界を張る!!!」
突如部屋は青い光に包まれたけれど、
くつくつくつ。
笑いだしたのは、男。