シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「お前では無理だ。延々と…蝶を振り払うことしか出来ない。
どいつだ。"魅入られた"奴は…」
口調を変えてあたし達を威圧的に走査する男は、やがてあたしに目を止め、濃灰色の瞳を細めた。
「お前か。
お前が――…
"凶星"か」
それは…決して好意的なものではなく。
「はい?」
思わず聞き返したあたしの言葉を、玲くんが遮って。
「ねえ…無理とはどういうこと?」
男の言葉は、玲くんの矜持を酷く刺激したらしい。
「言葉通りだ。お前では無理だ。
あの相手をするのは」
男が顎で促したのは――
蒼白の仮面。
黄色い外套。
「ひいいいっ!!?
な、何で!!?
いつの間に!!?」
それは距離を詰めるでもなく、ただ沈黙したまま…破壊された穴の付近に立っているだけ。
不気味以外の何物でもなく。
刻みつけられた恐怖が一気に背筋に駆け上る。
あたしを腕に抱く櫂の力が強まった。