シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「わ、悪かった、煌。あたしはてっきり、こうして手を握ればお前は落ち着くものだと思っていて…。芹霞がそうだったから…」
被害者の七瀬紫茉はひたすら謝って。
芹霞さんと煌がそんな手の繋ぎ方をしていたという事実を公開したばかりか、それが猛犬たる煌の手懐け方だと思って実行してしまう辺り…。
恐らく…彼女は天然の素質があるのだろう。
頭の回転は速いし、勘も鋭いようだけれど、少々…周囲の空気が読めない処もある。
「芹霞だけは特別なんだよ!!! 特別な女なんだよ!!! お前と一緒にするな!!!」
空気が読めないのは、煌の方が上か。
「な、なななな!!!」
悲痛にも思える声に、芹霞さんの顔が沸騰した。
「俺に触れられる女は芹霞だけだ。そして芹霞に触れる男も俺だけだ!!! それ以外は許さねえ、いいか、よく・・・」
ああ、この馬鹿蜜柑。
どうして状況を判断できないのだろう。
櫂様は、じっと煌を見つめていて。
玲様は――
「…もう一度言ってごらん、煌」
腕組みしながら、静かに笑った。
「どんな理由を持って、お前限定?」
…えげつなく。
しかし――
「……僕だって同じ想いだ。だけど…いや、だからこそ…」
それは小さい声だったけれど。
悔しそうに響かせながら、
「恋人繋ぎくらいで、いい気になるなよ、煌」
その拳を煌の鳩尾に入れた。
「し、紫茉…何だか怖いぞ、こいつら」
「ああ。迂闊に触れもしないな。慎重にしないと…朱貴の二の舞だ」
そんなぼやきが耳に伝わった。