シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ああ。だけどその前に聞かせて? あれはどんなものなの?」
「由来は知らない。だけど…正当なる持ち主が見れば、真実の姿を現すと言われている。兄上から譲り受けた大切なものなんだ」
「? それに蝶の姿を映して見ていたのは、お前じゃなく七瀬だったよな?」
すると皇城翠は、複雑な顔をした。
「…俺は力不足だから使えないのは仕方が無いことだが、紫茉は特殊だからな。見えるんだ」
「特殊?」
「ああ。彼女は例外仕様で、皇城でも位階がある。俺のような力はないくせに、修行すらしてないくせに…俺より位階は上だ。俺は大十位(だいじゅうみ)。紫茉はどれ程だと思う!!?」
何だか泣きそうな顔で、私達に訴えてきた。
「大七位」
ぶすっと。
それまでふて腐れて歩いていた煌が口を開いた。
最後まで口を開かなかったら、そんな不機嫌な態度を櫂様を平気でみせてもよしとする…何も入ってないその頭をぶん殴るつもりだったけれど、それはどうやら徒労で終わったらしい。
「な、なななんで判るんだ!!?」
「え? 七瀬だから、七?」
驚く翠に対して、煌が事も無げに答えた。
正解だったらしい。
「俺…紫茉がそんな理由で大七位だったら、皇城に反乱起こすぞ…」
ぶつぶつと声が聞こえて。
その間、櫂様は玲様を見て…玲様は頷いて、遠坂由香が袋から取り出した鏡を手にして、翠の前に出した。
「え? いいのかよ?」
自分から言い出したことなのに、すんなりと返されたことが意外だったらしい。
「……情報提供料だ」
あくまで。
ギブアンドテイクの関係に持ち込もうとするのか。
櫂様は――
この2人をまだ警戒しているのか。
どの点においてかは判らないけれど、彼が納得出来ない"何か"を感じていて、そしてそれを問い質そうともしない理由は何なのか。
それは――すぐに判る。