シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「あ…終着だ」
翠が声を上げるのと同時に、景色が揺らいで変わっていき…
「朱貴~ッッ!!!」
あの男の姿が、すぐに飛び込んできたから。
櫂様は芹霞さんを庇うように、その前に立つ。
「随分と…歓迎した態度ですね、紫堂櫂くん。助けて上げた僕に対して」
「……。全ての会話を聞いていたなら、俺が言いたい言葉は判るな?」
対峙した2人の視線は、強烈にぶつかり合う。
「それは同感です。
これ以上…僕達に、特に紫茉に近付かないで頂きたい。
そこのお嬢さんが原因で、ウチの紫茉は…翠くんごと危険に巻き込まれた。
金輪際…全ての接触を拒否します」
七瀬紫茉は驚いて、朱貴の顔を見上げたが。
「そうだな。芹霞にも近付かないで貰おうか。
そこの七瀬紫茉と接触している時に限って、芹霞は危険に巻き込まれている。
そんな危ない相手と、俺は…俺達は馴れ合う趣味はない」
「か、櫂!!? 何!!?」
芹霞さんの慌てた声を聞いても、櫂様は言葉を撤回せず、ただ静かに朱貴の濃灰色の瞳を見据えていて。
「伊達に…『気高き獅子』ではないか…」
朱貴は、にやりとした歪んだ笑みを浮かべた。
「それは話が早い。では」
「え? おい、た、朱貴!?」
そして七瀬紫茉の襟首掴んで、そして呆気にとられている皇城翠には慈愛深い微笑みを浮かべて優しく彼を促して。
何処かの歌謡曲にもあった、赤いポルシェに彼らを乗せて、車を発進させた。