シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「んー、何かな、『気高き獅子』。俺を恨むのはお門違い。恨むなら、怪しい行動をとったお父様を恨んでね」


氷皇がいる限り――

俺は紫堂本家にいる親父との連絡が出来ない。


正直、身内の反乱など想定していなかった俺は、今まで親父の動きを把握しようとすらしていなかった。


俺の頭にあったのは、あくまで現紫堂勢力の更なる拡大と、元老院に愚弄されないだけの地位の確保。


そしてそれはある程度は、2ヶ月前に新たなる元老院となった氷皇によって保証され、それ故に俺は氷皇の意向を無視出来ぬ立場に居た。


親父が現在何を考えているのか、そんな腹を割った会話などしたことがなく。


会ったとしても現況の報告と、一方的な親父の要求のみで終わるものだった。


一般的な…父子の関係とは言えぬ、主従のような関係。


俺が力を無くせば、代わりの者を次期当主に据えるだろう…それだけの関係。


そんな中で、俺が把握していた現況としては、紫堂潰しの外部の動きがあることだけで。


俺の知らぬ処で、一体どんな思惑が現況どう動き、どんな罠が張り巡らされているのか、まだ掴めてはいなかった。


親父は本当に、元老院に対して謀反を企んでいるのだろうか。


親父にまず真偽を問い質したいのが真情なれど、連絡を取った時点で…恐らく俺にも嫌疑がかかるのだろう。


俺は氷皇を信用していない。


芹霞の実姉である緋狭(ヒサ)さんと、俺達を助けてくれたことがあるのは事実だが、それが何に基づいての行動なのかが俺には判らないから。


氷皇が動くのは、必ず己が目的の為の"必然"。


その目的が何かは未だ俺は見定められずにいる。


そしてその氷皇が今回、自ら動いて俺達の監視についた。


必然的な監視の意味合いは何か。


俺の動きを抑えることで、どんなメリットが彼にあるのか。
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