シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「大丈夫。それより…明日のことを話し合おう」
呼吸を整え、僕は微笑んだ。
「そうだな…」
櫂は黒革のソファに座って、テーブルの上に置いた青い紙袋に視線を向ける。
僕は、高校生の制服を着ることについては抵抗感はない。
逆に嬉しいくらいだ。
僕は過去、学校という場所に制服を着て通学したことがなかったから。
次期当主には通学は必要ないと、紫堂本家で必要な勉学をしていた僕にとって、櫂と煌と芹霞の学校の話は、いつもきらきらとして眩しいものだった。
そんな彼らと、同じ時間を過ごせる…それは時を動かす魔法のようで。
ならば氷皇が用意した制服は、さながらシンデレラのドレスのようなもの。
そこに永続性はないけれど、一時の夢物語を…可能に出来るのか。
何より芹霞と――
同じ場所に立てるのか。
僕が疎外感を感じることなく。
「師匠…嬉しそうなとこ悪いけれど。
目覚めちゃった?」
つんつんと人差し指でつついてきた由香ちゃんに、首を傾げた僕。
「目覚めた? ああ、コスプレのこと? 抵抗はないね、だけど高校生に見て貰えるかなあ?」
そう苦笑すれば、由香ちゃんは泣きそうな顔で僕を見て。
「気付いてないんだね、師匠…」
「え?」
由香ちゃんが、僕の名前が刺繍してある制服を手に取った。
何てことだ。
ブレザーは男女共通だったのか。
ああ。
僕用には…何で
プリーツスカート付?
その時、制服からひらひらと青紙が舞い落ちて
『ご愁傷様~☆ ミス桜華、ガンバ』
腹立たしい。
あの胡散臭い笑い声が聞こえてくる。