シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「そういえば、桜華のミスコンって学園祭直後に開かれるんだったよな。去年の優勝者は死んじゃっているけど…今年はどうすんだろ。開催するつもりなのかな?」
由香ちゃんが呟いた。
去年は…黄幡一縷だった。
――カリスマjk占い師で、元『黄幡(オウバン)会』教祖。
黄幡一縷。
桜華学園3年生。
彼女の占星術の腕前と、その類い希なる美貌。
彼女は父親が開いた『黄幡会』の教祖を引き継いだ、歩く広告塔のようなもので、彼女に憧れ信奉した若者がこぞって入会をしたという。
「…氷皇が振り込み指定したのも"オウバンカイ"。更に芹霞に渡したパンフレットも同じ名前の学習塾か」
櫂の視線は、芹霞がテーブルに無造作に置いたパンフレットに向けられていて。
「此処まで執拗に"黄幡"を突きつけられては、ただの"偶然"と思わせたくはないらしいな、氷皇は。繋がりがあることを知らしめて、一体何を狙ってるんだ? 第一…同じ名字を持つ黄幡一縷は死んでいるというのに」
そう。
その彼女は、1ヶ月半ほど前に死んだ。
絞殺、そして野犬に顔と頭部、身体を食い散らかされた酷い有様で。
一縷だという証拠の決め手は、現場に転がっていた硝子の星冠(ティアラ)。
それはミス桜華生に贈られる、その年に1つしか作られない特殊なものだという。
犯人は判らず…そして、一縷のような惨殺体が後続して。
同一犯と仮定して、一縷はただその猟奇事件に巻き込まれただけなのか、意味があるのかは未だ解明されず。
ただ、一縷以降の犠牲者が、黒髪のおさげと、黒縁眼鏡の桜華生という共通事項があったものだから、その姿の少女が一縷を殺した犯人で、一縷はそれが誰かを特定出来ず、殺しまくっているという噂があり…それが七不思議の1つになった模様。
それがここ数日で、僕が得た情報。
あくまで、ネットから…だけど。