シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「だけど…占い師で美女で…くらいの情報しか出ないのも不思議だよ」


由香ちゃんが言った。


「神秘的美少女であれば、ネットでも写真出回ってもいいはずなのに…まるでなし。まあ…一縷が極度の写真嫌いで、盗撮した奴らは呪殺されるという噂があるから、びびっていたというのもあるんだろうけどさ」


だから、具体的に一縷はどんな美少女だったのかは判らない。


「ネットでも、"美しい"だの"麗しい"だの"神々しい"だのの形容ばかりで、髪が長い女としか表現ないし。結局は皆近くで目撃してないんだよな」


由香ちゃんが仲のいいネット友達も、情報はないらしく。


櫂はにやりと笑う。


「だとすれば、桜華に行くことに意味があるな。"サンドリオン"を最初に言い出したと言われている女、か。同じ桜華生の生の声は、どういう反応なのか…興味あるな」


桜華生。


僕は…思い出す。


上岐妙。


――彼女に取り憑かれて…私は…人を殺しているんです!!!


関わり合いたくないと思うのは…黄幡一縷に関するが故?


「なあ紫堂。桜華の声を聞きたいなら、七瀬に訊けばよかったじゃないか。どうして会わないなんて突っぱねたんだい? 七瀬…悪い奴とは思えなかったけどね、ボク。小猿クンだって、猿っぽくて面白かったし」


恐らく櫂は――


「会うことになるさ、必然的にな。俺もこんなに早くなるとは思っていなかったが…」


「え? でもさ、朱貴って奴と…」


「あいつも、お互いの知りたい情報は、七瀬と芹霞によるものだと言ったんだ。だから必ず俺達は、七瀬に…あいつらに行き着く」


――紫茉を使って…翠くんを取り込みにかかるつもりですか!!!


朱貴は、紫堂に敵意を持っているのは確か。

火事に居た朱貴。そして…


――用意周到ということですか。渋谷同等…誘い込む気ですか。


芹霞の周りで起きた怪奇現象は、偶然じゃないと告げた。


紫堂が起こしたことだと。

そう思う"何か"が、きっと彼にはある。


< 267 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop