シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「だけど…占い師で美女で…くらいの情報しか出ないのも不思議だよ」
由香ちゃんが言った。
「神秘的美少女であれば、ネットでも写真出回ってもいいはずなのに…まるでなし。まあ…一縷が極度の写真嫌いで、盗撮した奴らは呪殺されるという噂があるから、びびっていたというのもあるんだろうけどさ」
だから、具体的に一縷はどんな美少女だったのかは判らない。
「ネットでも、"美しい"だの"麗しい"だの"神々しい"だのの形容ばかりで、髪が長い女としか表現ないし。結局は皆近くで目撃してないんだよな」
由香ちゃんが仲のいいネット友達も、情報はないらしく。
櫂はにやりと笑う。
「だとすれば、桜華に行くことに意味があるな。"サンドリオン"を最初に言い出したと言われている女、か。同じ桜華生の生の声は、どういう反応なのか…興味あるな」
桜華生。
僕は…思い出す。
上岐妙。
――彼女に取り憑かれて…私は…人を殺しているんです!!!
関わり合いたくないと思うのは…黄幡一縷に関するが故?
「なあ紫堂。桜華の声を聞きたいなら、七瀬に訊けばよかったじゃないか。どうして会わないなんて突っぱねたんだい? 七瀬…悪い奴とは思えなかったけどね、ボク。小猿クンだって、猿っぽくて面白かったし」
恐らく櫂は――
「会うことになるさ、必然的にな。俺もこんなに早くなるとは思っていなかったが…」
「え? でもさ、朱貴って奴と…」
「あいつも、お互いの知りたい情報は、七瀬と芹霞によるものだと言ったんだ。だから必ず俺達は、七瀬に…あいつらに行き着く」
――紫茉を使って…翠くんを取り込みにかかるつもりですか!!!
朱貴は、紫堂に敵意を持っているのは確か。
火事に居た朱貴。そして…
――用意周到ということですか。渋谷同等…誘い込む気ですか。
芹霞の周りで起きた怪奇現象は、偶然じゃないと告げた。
紫堂が起こしたことだと。
そう思う"何か"が、きっと彼にはある。