シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
そして。
――そこのお嬢さんが原因で、ウチの紫茉は…翠くんごと危険に巻き込まれた。
朱貴は、神崎家で起こった一連の"攻撃"は、芹霞が原因だと櫂に告げた。
そしてそれは皇城家も巻き込むものだと示唆した。その理由は伏せて。
それに対し、櫂は…
――そこの七瀬紫茉と接触している時に限って、芹霞は危険に巻き込まれている。
朱貴は、2度も…芹霞から紫茉ちゃんを奪っている。
それは必然なのかと訊けば、
――伊達に…『気高き獅子』ではないか…。
彼は否定しなかったんだ。
櫂と朱貴が"決別"を演じたのは、朱貴についている"監視"を騙すため。
氷皇以外の誰かから、朱貴は監視を受けている。
氷皇と朱貴が知り合いかどうかは判らないけれど、彼の待ち構えていた場所に氷皇の車があったのなら、何らかの接触は必ずあったはずで。
ない方がおかしいんだ。
必然に動く氷皇であれば。
「とりあえず…氷皇の指示通りに動くしかないな、明日は」
僕はスカートを見て溜息をついた。
「あれ…葉山は男装みたいだよ。おお、君も初めての高校生だね? しかも1級飛び越えてだけれど」
桜は神妙な顔をしていた。
「まだ紙袋に何か残っているな。ん…これは葉山の黒髪。じゃあこの長い黒髪は…おや、師匠のだね。師匠は今回は地味な黒髪だよ。…で、眼鏡? 誰がかけるんだろ。あ…青い紙。ええと…師匠宛だ。
"色気は眼鏡で隠してね。清楚な美女を期待してるよ、レイチャン☆
桜華のATMは、朝8時から開いています。振り込みヨロシク☆"」
「玲…お前、随分と氷皇に可愛がられているよな」
櫂が愉快そうに笑った。
「やめろよ、気持ち悪い。からかう、の間違いだろ!!?」
僕は女装一式を見て、また溜息をついた。
請求書の件といい…
本当に忌々しい。
それでも。
同性だからこそのあの親密感、そして優越感…その良さも判っている僕だから、何とも複雑な心境だった。