シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「いつまで、監視は続く?」
「1ヶ月? 2ヶ月? もしかしたら1年?」
俺の問いを、青い男は茶化すように返してくる。
「「冗談じゃない!!!」」
俺と煌の声が重なった。
煌は日に日に不機嫌になっている。
元々短気な煌だ。ようやくZodiacの悪夢に解放された直後の、この家での監禁状態。
芹霞に会いたいのに会えないもどかしさを抱えているのは、俺だけではない。
玲だってそうだろう。
メール交流は可能とはいえ…芹霞との1日限定の"お試し"恋人兼"おでかけ"が、少し前までZodiacによって妨げられ、ようやく…という処でこの状況。
無感情の桜でさえ、その顔は険しい。
誰も彼もが、苛立ちに精神を乱している。
俺だってそうだ。
このまま1年も芹霞に会えないなんて、冗談じゃない。
1ヶ月でも嫌だ。
たった3日会えずにいる今でさえ――
会いたくて触れたくて仕方が無く。
"渋谷で友達と会う"だけでも、男が寄り付かないか心配で溜まらなく。
更には"美少女"だとしか情報がない、俺の知らぬ"シマちゃん"ならば、
――ねえ…。シマちゃんの周囲の男もきっと…美形なんだろうね。
そんな玲のつぶやきに、即刻榊を遣わしたぐらい余裕がない。
――榊は"約束の地(カナン)"の件でひと段落して、今休暇与えているから…好きなように使っていいよ~。
わざわざ部下の休暇を潰したのは、榊への嫌がらせか。
榊の力は未知数なれど、あの桜を簡単にねじ伏せ、氷皇に一目置かれているだけの実力があるのは確か。
――私の主は氷皇なのに…。
ぶつぶつ文句ばかり言っているけれど、芹霞の虫よけになるなら、この際誰でもいいんだ。俺達にとっては、榊などそんな程度の存在。