シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
居ないのに、ティアラ姫で溢れ返るベッドを見ると、体が熱くなる。


触れたい。

抱きしめたい。


煌も毎日…こんな想いを抱えて悶々としていたのだろうか。


芹霞の匂いが染みついたこの家で…。


芹霞の机には、学園祭で撮った僕達全員の写真が飾られてあった。


笑顔の芹霞。


必ず横には櫂が居て。

その顔には、柔らかな微笑みが浮かんでいる。


女嫌いとまで噂される…鉄面皮の御曹司は、愛する少女の隣では表情を変える。


それは極端すぎる愛情表現で。気づいていないのは芹霞だけ。


今飾られているのは全員の写真だけれど、もし今後…芹霞が、櫂と2人だけの写真を飾りだしたら、僕はどうするだろう。


芹霞の中から…それでなくとも存在感が薄い僕が、完全に排除されてしまったら、僕は平静でなんていられない。


考えただけでも発作がおきそうだ。


「早く探さないと」


僕は嗤いながら、芹霞や煌の言葉を思い出し、鍵穴のついた引き出しを見つけたが、


「あれ? 開いてる?」


鍵をかけ忘れていたのだろうか。


中にあったのは、15cm四方の赤いビーズの小箱。


目的物を見つけて、僕は思わず顔が弛んだ。


きっと芹霞は喜ぶだろう。

とびきりの笑顔を向けてくれるだろう。


そう思ったら、心の奥が温かくなってきた。


櫂にも煌にも近づけさせなかった、芹霞の大切な宝石箱。

2人共…中身は知らないらしい。


見られたくなかったから、あの時拒んだのだとすれば。


僕ならいいの?

僕は特別?


それは期待にも似た、好奇心だった。


僕はその箱を開けたんだ。


中にあったのは――
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