シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
僕はのろのろと、芹霞のベッドに腰掛けた。
手中の宝石箱。
投げ捨ててしまおうか。
元より僕は、芹霞に取りに戻るなんて伝えてなかったし。
――アレ取られたら…生きていけない。
叩き付けようとして…思いとどまった。
そんなことをしても、虚しいだけだ。
芹霞のベッドに、仰向けになって転がった。
今まで、櫂に遠慮して、意識的に芹霞の部屋に入ったことはなく。
ましてやベッドに触れたことすらなく。
僕にとって神聖だった領域で、僕は一筋…涙を零した。
芹霞の匂いが残るこの部屋で。
芹霞しか感じられないこの部屋で。
その芹霞が大切にしているものの中に入れない僕は、輪郭がもてない僕は…、芹霞の枕を両手に抱いてキスをした。
思い切り抱きしめた。
判って?
ねえ、僕の想いを判って?
「渡したくないよ、誰にも」
枕に顔を埋めて、芹霞の亡霊の温もりを追い求める。
「僕だけの…ものなんだ」
苦しくて苦しくて堪らない。
――オイデ。
好きで好きで堪らない。
――コチラニオイデ。
欲しくて欲しくて溜まらない。
――カワイイレイ。
僕はぎゅっと目を瞑り、その声を振り切った。
その時の僕は、衝動に手一杯で。
ただ芹霞だけしか考えられなくて。
だから――
聞こえなかったんだ。
気付かなかったんだ。
階段を上がる足音に。