シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
■3日目:惹起
**************
◇◇◇
本当に弱弱しい女の子だった。
いつも煤汚れた黄色いワンピースを着て、いつも同じ公園でぼんやり。
そしてガキ大将達に絡まれて、あたしがそれを助ける。
「ねえ、どうしてそんなに髪が長いの?」
体育座りをした櫂が、不思議そうに女の子に訊いた。
同様に座り込む少女の後方には、地面に零れ落ちるようにして拡がる黒髪。
「お顔が隠れちゃうよ?」
確かに、少女の顔は…髪に隠れて見えない時がある。
というか、助けても…いつも逃げるようにして帰るから、その顔をじっくり見たことが無い。
「切られるの怖い? 僕も怖いけど…隠しているとお化けに食べられちゃうんだって」
真剣な顔で櫂は言った。
櫂の散髪はあたしが係。
可愛い顔が隠れるのが嫌で、ぶるぶる震える櫂を騙し騙し…無理やり切っている。
「顔を…見せたくないの」
少女は言った。
「私は…――を盗むから」
聞き取れなくて、あたしと櫂は同時に聞き返した。
「心を…盗むって。怒られるの。だから隠しているの…」
意味が判らなくて、あたしは手を伸ばして、その前髪を上げてみる。
びくっと震える華奢な身体。
「綺麗…」
その目は…透き通るような碧眼で。
だけど…片目だけ。
「硝子のようだね」
櫂がふわりと笑った。
「気持ち…悪くないの?」
櫂とあたしは頭を横に振った。
すると少女は両手で顔を覆い、泣き出してしまった。
「…初めて。そう…言われたの」
「名前…教えて?」
あたしは言った。
「お友達になろう?」
櫂があたしを見て、少女に微笑みかける。
「なろう? 僕は櫂。こっちは僕が世界で1番大好きな芹霞ちゃん。強くて優しくて、本当に本当に僕大好きなの」
いつも惰弱なくせに、こういうことは臆面無く。
思わずあたしは照れてしまった。
少女は…躊躇いがちに言った。
「私の名前は…」
――イチル」
と。
◇◇◇
本当に弱弱しい女の子だった。
いつも煤汚れた黄色いワンピースを着て、いつも同じ公園でぼんやり。
そしてガキ大将達に絡まれて、あたしがそれを助ける。
「ねえ、どうしてそんなに髪が長いの?」
体育座りをした櫂が、不思議そうに女の子に訊いた。
同様に座り込む少女の後方には、地面に零れ落ちるようにして拡がる黒髪。
「お顔が隠れちゃうよ?」
確かに、少女の顔は…髪に隠れて見えない時がある。
というか、助けても…いつも逃げるようにして帰るから、その顔をじっくり見たことが無い。
「切られるの怖い? 僕も怖いけど…隠しているとお化けに食べられちゃうんだって」
真剣な顔で櫂は言った。
櫂の散髪はあたしが係。
可愛い顔が隠れるのが嫌で、ぶるぶる震える櫂を騙し騙し…無理やり切っている。
「顔を…見せたくないの」
少女は言った。
「私は…――を盗むから」
聞き取れなくて、あたしと櫂は同時に聞き返した。
「心を…盗むって。怒られるの。だから隠しているの…」
意味が判らなくて、あたしは手を伸ばして、その前髪を上げてみる。
びくっと震える華奢な身体。
「綺麗…」
その目は…透き通るような碧眼で。
だけど…片目だけ。
「硝子のようだね」
櫂がふわりと笑った。
「気持ち…悪くないの?」
櫂とあたしは頭を横に振った。
すると少女は両手で顔を覆い、泣き出してしまった。
「…初めて。そう…言われたの」
「名前…教えて?」
あたしは言った。
「お友達になろう?」
櫂があたしを見て、少女に微笑みかける。
「なろう? 僕は櫂。こっちは僕が世界で1番大好きな芹霞ちゃん。強くて優しくて、本当に本当に僕大好きなの」
いつも惰弱なくせに、こういうことは臆面無く。
思わずあたしは照れてしまった。
少女は…躊躇いがちに言った。
「私の名前は…」
――イチル」
と。