シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
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「く、黒い鬘(カツラ)…桜ちゃんじゃなく、

――煌!!?」


ベッドルームにて桐夏生なのに桜華生の制服を渋々着て、リビングで付き合わせた煌の格好に唖然。


ない。

あのやや猫毛のふわふわした橙色が。

あたしの大好きな橙色が。


――黒色。


櫂と同じような色だけど、櫂程さらさらな直毛じゃない。


微妙にうねっている処は、まるで煌のいつもの髪質のようで。


だからますます、煌の黒髪がリアルに感じる。


「ど、どうよ?」


照れてるのか何なのか。


とりあえず…嬉しそうだ。


奴はずっと櫂の黒髪に憧れて、ずっと自分の橙色がコンプレックスで。染髪したいというのをずっと止めてきたけれど。


髪を指先で弄りつつ、少しもじもじしながら、あたしをちらちらと見る煌に、あたしは――



「だ~~ッッッ!!!

何故泣く、お前はッッ!!!」



「櫂、煌が煌じゃなくなっちゃった~ッッ!!!」



慌てる煌の前で、あたしは櫂の胸に飛び込んだ。


「しかも、何故櫂に!!! 訊いてるのは俺だぞ!!?」


また何やらぷんすか怒っているけれど。

橙色じゃないから、まるで他人のようだ。


本当に昨日、


――芹霞、無視しないでくれ…。


そう別部屋で抱きついてきた弱虫ワンコなのか。


――どさくさ紛れて、何処を触る馬鹿者!!!


あの、盛りまくるエロワンコなんだろうか。


何か違う。

煌じゃない。
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