シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「だから言ったろう、煌。芹霞が泣き叫ぶと」
櫂は、愉快そうに笑っている。
「かなり、イイと思うけどね、ボクは。派手な"インパクト"が抑えられれば、自然と…元々の顔立ちに目が行くから」
由香ちゃんが、煌の頭から足先まで遠慮無くじろじろ眺めて、感想を述べた。
「とりあえず、普通にモテるよ。
紫堂程じゃないにしても」
あたしは、また煌を見た。
「やっぱり煌じゃない~ッッ!!!
その鬘、桜ちゃん用じゃないのッッ!!?」
「ボクも葉山のかと思ったけれど、葉山は今、元々短髪だからね。付け毛とるだけでいいのさ。第一、サイズが違う。これは絶対如月用だ」
あたしは、またまた煌を見た。
「オレンジワンコの方がいいッッ!!! 黒ワンコは嫌~ッッ!!」
「だけどさ、こっちの方が衆人ウケはいいよ?」
もう一度よく煌を見た。
「あたしは橙色がいい~!!! 黒いの嫌だ~ッッ!!!」
「遠坂…俺、褒められてるの、貶(けな)されてるの? ここまで嫌だ嫌だ言われると、何か…凹んできたんだけれど、俺」
「神崎はそのままの、いつも通りの君がいいんだってさ」
「!!!」
「おお、如月。突然顔が輝いたね。駄目駄目、君は黒ワンコに決定済みだ。文句言わない、焦らしプレイも技の1つだぞ? …本当にも単純だ、そうそう鬘は被っていようね。あ、葉山。どうだい、初高校生」
奥から、何やら神妙な顔をした桜ちゃんが出てきた。
「桜ちゃん、男の子の制服似合う…」
桜ちゃんは"約束の地(カナン)"から帰ってきてから、煌と緋狭姉の修行とやらに励んだせいか、華奢な体格に筋肉がついてきたようで。身長も僅かなりとも高くなったようで。
「筋肉ついて体脂肪率まで落ちて、伸びたのは手足だけっていうのが、絶対世の男達のブーイングを誘うよね」
「???」
すらりと伸びた手足と、無感情故に物憂げに思わせる、綺麗に整った顔だち。
「ねえ、櫂。どうしてあんたの周りには、普通の男が寄りつかないのかな」
「は?」
あたしはぼやいた。
またあたし…女生徒のやっかみを受けること必至だ。