シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
何とか全員支度を終えた。
結局煌は、黒ワンコだ。
品川にある桜華まではJR使えば然程の距離でもないし、皆で電車通学かと思いきや、
「櫂様。紫堂の御曹司ともあろう方が交通機関など…とんでもない。我がホテルの車で送迎致します。是非お使い下さいませ」
これから高校に行くというのに、用意されたのはピカピカに磨かれた…黒塗り胴長リムジン。
桜華学園は、別に金持ち学校でもないのだし、そんなもので必要以上に目立ちたくはない。
と思うのは庶民たるあたしと由香ちゃんだけだったみたいで。
煌と桜ちゃんは、櫂の判断に任せるというから…当然櫂も却下だと思えど、
「折角だ。車に乗れ」
御曹司というのは、特殊な生き物らしい。
櫂との感覚に、隔りを感じて…切なくなった。
窓から眺める景色の多くは、紫堂財閥が関連している。
私鉄やバスもそうだけれど、高層ビルの多くは紫堂財閥のもの。
繁華街で賑わう…娯楽施設も紫堂財閥のもの。
何処に行っても紫堂財閥の影響力は大きく、その拡大に努めたのが、あたしの隣に居る"櫂様"だと思えば、よくも此処まで成長したものだと、拍手をしたくなる。
その頭を切り開いて、一体どういう構造になっているのか見てみたい。
あたしと同じ17歳で、昔は怯懦で泣いてばかりいたくせに。
月日は残酷だ。
あたしが櫂に敵う要素は何1つないのが現実。
あたしが守っていた櫂に、守られているこの事実。
未だ納得出来ない蟠(わだかま)りがある程で。
ぐだぐだ考えていたら、品川に車は入っていた。