シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
運転手に言って、車を桜華の手前につけて貰い、出来るだけご大層な車の目撃者を減らそうと試みた。


「転校、ではないよね?」


それは昨日から何度も念を押していたもの。


あたしは桐夏が好きだ。

桐夏には弥生もいるし、卒業は桐夏でしたい。


「玲に裏から調べさせたら、桐夏で俺達の扱いは…姉妹校内での高校交換制度とやらの最初の生徒らしい。そんな制度を作ってまで、氷皇は俺達を桜華に行かせたいようだな。まあ、せいぜい5日程度らしいが」


五皇かつ、元老院の力は恐るべし。


「ねえ…そう言えば、"約束の地(カナン)"での白皇の後ってどうなったの? 今四皇?」


不意に疑問に思って櫂に訊いてみた。


「妥当な後継者が居なくて揉めているらしい。とりあえずは今、機能しているのは、氷皇、紅皇、黒皇、緑皇の四皇だ」

「ふうん…」


その時、正門前ががやがやとしていて。

凄い人だまりだった。


「何だろうね?」


由香ちゃんが背伸びをして、その集団を見たけれど…何が起きているのかまでは見えなかったようで。


ただ黒髪煌だけが目を細めて。


「女を取り巻いているようだけれど…」


「成程な。行くか」


にやりと笑った櫂は事態を察したようだけれど、基本あたしと由香ちゃんと桜ちゃんはチビッコだし。巨体の煌は見えても判らないお馬鹿だし。


やはり謎を解けるのは櫂だけで。


すらりとした長身と、均整の取れた肉体に、某デザイナーに発注した…桐夏の次に人気の高い桜華学園の制服。


櫂に着用されればデザイナーも制服も本望に違いない。


更に煌と桜ちゃんにまで着て貰える。


しかし彼らの…とりわけ櫂の美貌に、こんな安っぽい制服は役不足の感は否めない。


それだけ櫂は悠然たる壮絶なオーラを放っているのだから。


たかが高校生の制服如きが、抑えられるわけがない。
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